「概念化って何?」と聞かれて、皆さんは説明できますでしょうか?
先日、会社にて「これからは、概念化能力が必要だ・・・」といった話を横から聞いたため、
本記事では、この「概念化」について、「そもそも概念化って何?」、「概念化能力を身につけるメリットってあるの?」、「どうやって概念化能力を身につけるの?」と疑問を思っている方々に向けて、「『概念化』の意味」、「概念化能力(コンセプチュアルスキル)とは?」、「概念化能力(コンセプチュアルスキル)が求められる理由」と鍛えるメリット」、「概念化能力(コンセプチュアルスキル)の鍛え方」について説明したいと思います。
「概念」と「概念化」の意味
まず、概念について国語辞典で意味を調べてみたいと思います。
goo辞典
1.物事の概括的な意味内容。「―をつかむ」「文学という―から外れる」
goo辞典
2.《concept》形式論理学で、事物の本質をとらえる思考の形式。個々に共通な特徴が抽象によって抽出され、それ以外の性質は捨象されて構成される。内包と外延をもち、言語によって表される
明鏡国語辞典
1. 個々の事物から共通する性質を抜き出し、それらを総合して構成する普遍的な表象。言語によって表され、内包と外延をもつ。
明鏡国語辞典
2.物事についての概括的な意味内容。
「『平和』という━」”
各国語辞典から「概念」とは「事物の本質(共通の形式)をとらえる思考の形式」と読み取れます。
その文脈から、「概念化」とは「個々の事象/物事で共通する性質や本質を構造的/体系的にまとめ上げ理論化するプロセス」のことと言えます。
まだイメージが沸きづらいとおもいますので、もう少し、具体例を交えて説明します。
概念化を活用した問題解決例として、小学校お受験などでよく出題される「仲間外れ問題」というのがあります。
これは、例えば、「ジャガイモ、キャベツ、人参、大根、ごぼうの中で仲間外れの野菜はどれでしょう?」といった問題が出題され、「ジャガイモ、人参、大根、ごぼう」は「土の中で育つ野菜」であるのに対し、キャベツだけが「土の上で育つ野菜」になるため、「仲間外れの野菜は『キャベツ』」と回答するといったものです。
この「『土の上でできる野菜と、土の中でできる野菜がある』という性質(本質)を見つける」、「性質ごとに個別のやさいを分類」、「『仲間はずれでない野菜』、『仲間はずれの野菜』といった概念を練り上げる」という一連のプロセスがまさに「概念化」ということになります。
「概念化」と「抽象化」の違い
ここで、「概念化」と似た言葉に「抽象化」というものがあります。ここでは、「概念化」と「抽象化」の違いを説明したいと思います。
概念化は「個々の事象/物事で共通する性質や本質を構造的/体系的にまとめ上げ理論化するプロセス」に対して、抽象化は「個別具体的なものから、性質を抜き出すプロセス」となります。
先ほどの仲間はずれ問題を例にして違いをもう少し具体的に説明します。
「抽象化」は、野菜を個別にみて「『土の中で育つ野菜』と『土の上で育つ野菜』という性質がある」と見つけ抜き出す行為に対して、「概念化」は「『抽象化』で抜き出された性質をもとに『野菜を再分類』、『分類されたグループごとに新たな概念(仲間はずれでない野菜/仲間はずれの野菜)を付ける』という一連の行為を指します。
以上のことから、「抽象化」は、「概念化」を行なう前提であるため、「抽象化」と「概念化」は密接に関係しているといえます。
概念化能力(コンセプチュアルスキル)とは?
「概念化能力」とは、膨大な知識や情報を整理分析し、複雑な事象を概念化することで、物事の本質を見極める能力のことを意味しています。
ビジネスにおいては、「コンセプチュアルスキル」と呼ばれることが多く、複雑な物事を論理的に考えられるようになれば、業務を合理化・効率化することができるだけでなく、個人や組織のポテンシャルを引き出し、パフォーマンスを向上させることも期待できるため、企業の人材育成において、身に付けるべきスキルとして注目されています。
この概念化能力(コンセプチュアルスキル)は、1955年発行の『スキル・アプローチによる優秀な管理者への道』において、米ハーバード大学の経営学者、ロバート・L・カッツ氏がはじめて提唱したものになります。
概念化の例としてソニー損保の自動車保険の例が有名なのであげておきます。
ソニー損保では走行距離連動型の自動車保険に、優良運転者へ保険料をキャッシュバックする要素を取り入れています。 保険料の不公平を訴えるユーザーの声から「問題が走行距離と運動行動の質にある」と見抜き、優良運転者が増えれば支払い保険料が減ると考えた結果の取り組みです。
概念化能力(コンセプチュアルスキル)を構成する10の要素
概念化能力は単体の能力ではなく、以下の10の要素が複合されて構成されていると言われています。
- 論理的思考(ロジカルシンキング)
- 批判的思考(クリティカルシンキング)
- 水平思考(ラテラルシンキング)
- 多面的視野
- 受容性
- 柔軟性
- 知的好奇心
- 探究心
- チャレンジ精神
- 俯瞰力
次にこの10の要素を説明していきます。
論理的思考(ロジカルシンキング)
物事を論理的に整理できる能力です。ビジネスの現場や組織の運営では、さまざまな要素が絡まり合って成功と失敗、解決すべき課題が生まれるため、その複雑さを理論的に解きほぐし、フレームワークなどに当てはめて体系的に整理し、抽象化・構造化していくスキルとなります。
批判的思考(クリティカルシンキング)
物事を客観的に分析できる能力です。「手に入れた情報が正しいのか?」「本当の問題は他にあるのではないか?」など、物事の前提を疑い、批評的に見つめることで思考の偏りを排除し、本質的な課題や改善点を特定していくスキルです。とりわけ物事の中に潜むマイナス要素を発見するのに重要で、またリスクの少ない対処法や最適解を導き出すために不可欠なスキルとなります。
水平思考(ラテラルシンキング)
経験や常識、固定概念に囚われることなく、自由な発想で物事を多角的に捉えるスキルです。誰も思いつかなかった新たな可能性に気づく能力は、猛スピードで変化を続ける現在のビジネス環境において不可欠な能力となります。
多面的視野
ある課題や事象に対して、自分とは異なる立場や視点から考えることができる能力です。物事に対して複数の角度からアプローチし、新しい可能性の発見をしていくスキルになります。
受容性
自分の考えとは異なる価値観を否定・無視するのではなく、受け入れて向き合うことができるスキルです。ビジネスのグローバル化、ダイバーシティが進む中、多様な価値観を受け入れられる能力の重要度は増しています。一方的に自分の意見を押し通すのではなく、さまざまな意見を公正・公平に比較検討することで、より良い解決策、より多くの人が満足できる結論の発見が可能となります。
柔軟性
不確実な時代において、マニュアルや既存の手法・価値観にこだわることなく、臨機応変に対応できる能力となります。イレギュラーな事態に動じることなく対峙できる素養は、リーダーシップを発揮するうえでも重要となります。
不確実な時代において、マニュアルや既存の手法・価値観にこだわることなく、臨機応変に対応できる能力となります。イレギュラーな事態に動じることなく対峙できる素養は、リーダーシップを発揮するうえでも重要となります。
知的好奇心
新しい価値観や未知の物事に対して、拒絶することなく興味を示し、積極的に情報を収集し、体験していこうとするスタンスです。この知的好奇心とラテラルシンキング、多面的視野のスキルを複合的に発揮することで、組織に風を起こし、大きなエネルギーを生み出すことができます。
探究心
物事に対して興味を示し、自身が納得するまで情報を収集し、考えを突き詰め、成果が出るまで粘り強く掘り下げていくスタンスです。ビジネスやプロダクトなどについて表面的に理解するのではなく、背景や社会的意義まで深く考えることで、本質的な課題の発見や構造化もできるようになります。
チャレンジ精神
リスクを恐れず積極果敢にチャレンジするスタンスです。チャレンジによって自分自身や周囲に成長をもたらし、生き生きと働けるようになります。
俯瞰力
主観と客観を交えながら、大所高所から物事の全体像を把握しようと努めるスタンスになります。
重要な判断や新たな施策への取り組みにおいても、広い視野で物事を捉え、今後を予想し、将来的なリスクや成功可能性まで考慮することが肝心です。
概念化能力(コンセプチュアルスキル)が求められる理由
当初、カッツ氏が提唱した1950年代においては、この概念化能力はトップのマネジメントレイヤーが主に必要とされる能力でありました。
その後、ピータードラッカーが知識労働者(ナレッジワーカー)の時代であり、多くの労働者の仕事は肉体労働から知識労働に変わっていくと提唱し、その中で、概念化能力(コンセプチュアルスキル)は、マネジメント層だけでなく、ナレッジワーカーを含むすべての層で必要な能力と提唱されました。
「VUCA」と呼ばれる昨今の不確実で予測しがたい世の中になった昨今において、この「概念化能力(コンセプチュアルスキル)」はすべてのワーカーに求められる能力となっています。
※あえて付け加えると、マネジメント層における、このスキルの重要度が昔も今も変わっておらず、上位に行けば行くほど、現在もこの概念化能力(コンセプチュアル能力)が求められる傾向は変わりません。
・ミドルの市場価値を判断する際、コンサルタントが最重視するのは「テクニカルスキル」。年収800万円以上の求職者支援を専門とするコンサルタントは、「コンセプチュアルスキル」を重視。
・コンセプチュアルスキルで特に重視するポイントは「定義化」、ヒューマンスキルは「コミュニケーション能力」、テクニカルスキルは「業務経験」と「専門知識」。
引用元:ミドルの市場価値の磨き方」についての調査(転職コンサルタント対象) https://www.lisalisa50.com/research20180528_12.htm
▶テクニカルスキルに関する記事はこちら
▶ヒューマンスキルに関する記事はこちら
概念化能力(コンセプチュアルスキル)を鍛える3つのメリット
概念化能力(コンセプチュアルスキル)を鍛えることで3つのメリットがあります。
- 本質的な課題の抽出から問題解決ができるようになる
- 組織の方向性・業務の全体像の共有化ができるようになる
- メンバーならびに組織の生産性を向上させられる
本質的な課題の抽出から問題解決ができるようになる
何かの物事やトラブルに対症療法で向き合うだけでは、組織の成長やビジネスの成功は望めませんこの「概念化能力」を鍛えることによって本質的な課題を見極め、解決策を導き出すことができるようになります。
組織の方向性・業務の全体像の共有化ができるようになる
概念化能力を鍛えることにより物事の構造を分かりやすく捉えることができるようになります。その結果、それを組織で共有することで、何をしなければならないか、何のためにその業務はあるのか、何を優先させるべきなのか、仕事の全体像や方向性をメンバー間で共有することが可能となります。
メンバーならびに組織の生産性を向上させられる
組織の方向性/業務の全体像の共有が進めば、自分の業務の意義を正しく理解し、組織の中での位置付けにも納得できるようになります。その結果、個々のモチベーションやエンゲージメントにつながり、結果として組織全体のパフォーマンスや生産性に大きな影響を及ぼすことができるようになります。
概念化能力(コンセプチュアルスキル)を鍛え方
概念化能力(コンセプチュアルスキル)を鍛える方法は「研修を受けて鍛える」と「日常的に意識して鍛える」2つの方法があります。
研修を受けて鍛える
「研修を受ける」というのは、勤め先の企業が外部講師を呼んで行ったり、あるいは研修会社が行っているセミナーに参加するなどして、概念化能力(コンセプチュアルスキル)を鍛える方法になります。
代表的な研修コンテンツとしては特定のキーワードやトピックに対して発想を出し論理的につなげ、それを他者と議論する「マインドマップトレーニング」や「プレゼンブレインストーミング」などがあります。
そもそもコンセプチュアルスキルは短期的に伸ばせるものではないということや、研修を受けるにはお金と時間が必要でハードルが高いなどの問題があります。
日常的に意識して鍛える
「日常的に意識して鍛える」については、物事を論理的に考えたり、多角的に検討することが自然にできるようになるためには、習慣をつけなければなりません。まずは日常で起こる物事に対して「なぜだろう?」と疑問を持ち以下の3つの思考で考えることが概念化能力を向上させるトレーニングとなります。
- 概念化
起こっている現象や事象を絞り込んだ1点でなく、それを取り巻くすべてのものを含めて全体的に見ること - 構造化
ものごとを成り立たせている要素を見出し、分解・組み立てを行うこと - 体系化
構造化されたひとつひとつの要素に関連性を見出し、広がりを持たせること
日常で起こる疑問に対し、この3つの思考を行う癖をつけ概念化能力(コンセプチュアルスキル)を鍛えていきます。
まとめ
本記事では、本記事では、この「概念化」について、「そもそも概念化って何?」、「概念化能力を身につけるメリットってあるの?」、「どうやって概念化能力を身につけるの?」と疑問を思っている方々に向けて、
「『概念化』の意味」、「概念化能力(コンセプチュアルスキル)とは?」、「概念化能力(コンセプチュアルスキル)が求められる理由」と鍛えるメリット」、「概念化能力(コンセプチュアルスキル)の鍛え方」について説明してきました。
VUCAの時代と呼ばれる昨今において、概念化能力というのは必要なスキルとなります。
現状より少しでも成長していきたいとお考えであれば、これを機に概念化能力(コンセプチュアルスキル)を鍛えてみてはいかがでしょうか?
最後に
情シスのキャリアの記事もありますので、もしご興味あればご参照ください。
情シスのキャリア関連記事
https://digital-jyoshisu.com/archives/category/キャリア