ビジネス環境の変化や、人材不足に対応するため、近年、タレントマネジメントを導入して人材活用の最適化を図る企業が増えています。
本記事では、タレントマネジメントの概要、タレントマネジメントシステムの機能、導入のメリット、ポイントを解説していきます。
タレントマネジメントシステムとは?
昨今、人材不足が課題となっており、企業においては、「人材をいかに有効活用するか」が重要なテーマになっています。しかし、その一方で、活用にあたり必要な能力評価では、アナログな手法が用いられており、従業員の能力を合理的かつ公平に判断することが難しい状態となっています。
このような背景を受けて、近年注目を集めているのが、「タレントマネジメントシステム」です。
「タレントマネジメントシステム」とは、個人情報やスキル、経験や実績など、企業に所属する人材に関する情報を一元管理し、情報を活用するためのシステムで、人材の「タレント」すなわち能力やスキルに焦点を当てて、戦略的な人材育成や配置を行うために活用されています。
タレントマネジメントシステムの主な機能
タレントマネジメントシステムの機能は、製品により異なる部分がありますが、大きく分けると
「社員の基本情報管理」、「組織図、組織配属管理」、「社員の目標管理」、「社員の業務経歴管理」、「社員の評価管理」、「スキル管理」、「アンケート実施」、「各種データの分析」の8つになります。
- 社員の基本情報管理
社員の基本情報となるプロフィールを管理する機能です。社員と名前を並べて表示し顔と名前が一致するになっている製品が多いです。 - 組織図、組織配属管理
企業における組織図を可視化し管理する機能です。その組織に所属する各部門に人員情報も保持しており、人員情報をもとに組織図を生成したり、配置転換のシミュレーションを行う機能を備えていたりする場合もあります。 - 社員の目標管理
社員の目標を管理する機能です。年次や四半期、月単位で目標を管理できる他、全社目標や部門目標など組織やチーム単位での目標管理も可能なものもあります。
こちらの機能を活用することでタイプ別の業務や目標の達成に優秀な実績を残している社員情報もタレントの要素として管理することが可能になります。 - 社員の業務経歴管理
社員の業務経歴を管理する機能です。各社員の過去の業務経歴を管理することで、その人の強みを把握することが出来、その情報を活用することで中長期なキャリア育成も可能となります。 - 社員の評価管理
社員の評価を管理する機能です。過去の各部署での評価を確認できることにより、その人のパフォーマンスが発揮しやすい環境を把握することができます。 - スキル管理
社員のスキルを管理する機能です。社員のスキルを可視化することにより、組織における強み、弱みを把握することができ、足りない部分は中途採用を実施するなど、人材採用計画に活かすことができます。 - アンケート実施
アンケートを実施する機能です。社員情報を活用し、アンケートの実施と集計作業を行うことも可能です。たとえば、エンゲージメントを判断するための調査や、研修の効果を確認するためのアンケートを行うときに活用します。 - 各種データ分析
社員情報やスキル情報を基に、データ分析やタレントマネジメントの可視化などを行う機能です。
こちらの機能を活用することで、自組織の課題などを可視化することが可能となります。
タレントマネジメントシステムの導入メリット
タレントマネジメントシステムの導入によるメリットは、「人材配置の最適化に伴う、社員のパフォーマンスの向上」、「計画的な人材育成の実現」、「合理的な評価による社員のモチベーションの維持」、「将来の幹部候補の発掘とローパーフォーマの特定」、「エンゲージメント強化による離職の防止」の5つになります。
- 人材配置の最適化に伴う、社員パフォーマンスの向上
タレントマネジメントシステムのデータを活用することで、どの人材がどの部署に適任か判断することが可能になります。人材を最大限に活用することで、全体の生産性があがり、全社的なパフォーマンスの向上が見込めます。 - 計画的な人材育成の実現
タレントマネジメントシステムを活用することで、従業員のスキルや個性を可視化できるため、各個人のどこを伸ばせば自社にとって理想的な人材になるかがわかるようになります。 - 合理的な評価による社員のモチベーションの維持
タレントマネジメントシステムを活用することで、従業員の適切な能力評価ができるようになり、モチベーションの向上が見込めます。
人事評価は「従業員満足度」に直結するため、スキルや能力が過小評価されると、自社に対する従業員の満足度は低下し結果的にハイパフォーマーの業務の質が低下し、組織の生産性に大きな悪影響を与えるリスクがあります。
リスクを回避し企業を安定的に成長させ続けるためには、優秀な人材をいかに適切に評価するかが重要です。
タレントマネジメントシステムを活用することで、人事評価指針が明確になり、システムが客観的かつ合理的に従業員のスコアリングを行ってくれるため、適切な能力評価が可能となります。 - 将来の幹部候補の発掘とローパフォーマーの特定
タレントマネジメントシステムのデータを活用することで、幹部候補となる優秀な人材とローパーフォーマを把握することができます。
開発効果の高い人材に対して集中的な教育を実施することで、次世代リーダーなど幹部候補を計画的に早期育成できます。また、ローパーフォーマに関しても、データを活用し改善施策をとることができます。 - エンゲージメント強化による離職の防止
タレントマネジメントシステムを活用することで、評価指針が明確となり、合理的な評価が行えるようになるため、社員のエンゲージメントが向上し、結果として離職率の低下が見込めます。
タレントマネジメントシステム導入時のポイント
タレントマネジメントシステムを導入する際の重要ポイントは、「必要な機能が揃っているか」、「セキュリティレベルは十分か」、「自社にあった利用形態になっているか」の3点になります。
- 必要な機能が揃っているか
主要機能はどのタレントマネジメントシステムにおいても同じ部分が多いですが、製品によって、とくに重視している「強み」となる機能は異なるため、自社の解決したい課題を鑑みて、自社とマッチするか見極めることが重要です。また、製品によっては機能追加がオプションとなっているものもあるため、その際の料金なども調べておくことが重要です。 - セキュリティレベルは十分か
タレントマネジメントシステムには、社員の個人情報や業務データなど、機密情報が登録されることになるため。社外へ流出したり、社内で不正利用があったりすると、自社のコンプライアンスが大きく損なわれてしまいます。
そのため、利用するシステムのセキュリティレベルには十分な考慮が必要です。
利用する際には、サービス提供会社にセキュリティ対策の状況について確認するようにしましょう。 - 自社にあった利用形態になっているか
タレントマネジメントシステムは、プランや利用人数、利用方法によってサービスメニューが構成されているケースが多いです。なので、導入の際には、一社で決めることなく、相見積もりなどをし、自社に適した形態を慎重に検討する必要があります。
まとめ
本記事では、タレントマネジメントシステムの概要と機能、メリット、導入時のポイントについて解説しました。
タレントマネジメントシステムを導入することで、企業は戦略的な人材配置と育成が可能となり、社員個人にとってもキャリア開発やエンゲージメントの向上なども期待できます。
一方で、タレントマネジメントシステムは製品によってさまざまな機能を搭載しているため、システム導入によって実現したい目標の設定を行い、PDCAサイクルを回して効果検証を行うことが重要です。
最後に
他にもデジタルツール関連の記事ならびに、情シスのキャリアなどIT技術以外の記事もありますので、もしご興味あればご参照ください。
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